読み終える目安 約 11 分
今では耳にすることが少なくなった「シックハウス症候群」ですが、今は日本の建材が進化して、心配しなくても大丈夫と思われている方も多いのではないでしょうか?
もちろん有害物質を使わないようにしたり、化学物質の含有量に制限をつけるなどの対策は建築基準法により定められています。
では、それらの現状の対策の軸となっているのが「換気扇」だということはご存知でしたか?
ここでは、改めて知っておきたい「シックハウス症候群」の問題性と、現状の日本の対策の意味と、本当の対策方法について詳しくお伝えします。
シックハウス症候群についてお話しする前に、よく耳にする「症候群」の意味をご存知でしょうか?これは一般的には原因が明確でなかったり、症状が出る時と出ない時があったりするけれど、多くの方が同じような原因で似た症状をいくつか発症してしまうような場合に使われる医学用語です。
シックハウス症候群は、例えば花粉症でいう「花粉」のように、最近の建築建材や家具などから放出される化学物質などが起因する、アレルギー症状のようなものです。新築やリフォームしたばかりの住宅や学校、病院などの化学物質に囲まれた部屋で長時間過ごしたりすると、目がかすんだり、めまいや息苦しさを感じるなどの症状が出てくる方が多いようです。
ちなみに、シックハウス症候群が最初に問題視されたのは、1990年代頃からです。この時の日本を振り返ると、景気の流れに合わせて、とてつもない数の住宅が短期間で建設されていました。
その需要に合わせるように、より短期間で施工できる利点をもった、ビニールクロスや化学物質を含む建材や塗料が普及しました。さらに、建築業界の技術向上により、日本の住宅の気密性が上がりました。(隙間風が発生しづらい作りになったということです。)
しかし、これらがまさに、シックハウス症候群を生み出す要因の一つとなってしまったと言われています。
せっかく新しく建てた我が家で症状が出てしまったら、とても悲しいですよね。。 未然に防ぐためにも、シックハウス症候群についての知識をしっかりと身に着けて、住まいの計画をすることが何よりも大切です。
シックハウス症候群が問題視されたことにより、現在は建築基準法に基づいたシックハウス対策が取り決められています。皆さんは、その制限の具体的な内容をご存知ですか?簡単にまとめると、以下の内容になります。
注目していただきたいのは、3番です。
シックハウス症候群の主な原因とされている「ホルムアルデヒド」は、完全に使用を禁止されているわけではなく、極力含有量の少ないものを使用し、換気設備をつけることで化学物質を室内にとどまることを防ぎましょう。ということです。
ここで言われている換気設備というのが、24時間換気の換気扇です。(住宅ではトイレの換気扇として設置されることが多いです。)この換気扇を毎日24時間、つまり常に稼動させ続けることが、シックハウス症候群を防ぐための条件とされているわけです。
皆さんは、この24時間換気の換気扇を常に稼動させていますか?
(2003年7月以降に建てられた建物には、最低必ず1箇所は設けられているはずです。)
この法律が決定した当初は、24時間換気の換気扇にスイッチが付いていませんでした。居住後に誤って消さないようにするためです。しかし、換気をすることで温まった室内の空気が外に逃げたり、外部から冷たい空気が流れ込んだり、その部屋を利用していないときも含めて24時間つけ続けるのは電気代がもったいないという声が多く寄せられたため、今は24時間換気の必要があってもスイッチが付けられるようになりました。
それはつまり、きちんと稼動してシックハウス症候群対策を取れているかどうかは、住んでいる方々の自己責任であるということです。
シックハウス症候群の症状は、原因が明確でなかったり、必ずしも発症するとも限らないものではありますが、一つの目安として厚生労働省が発表している症状や、実際に発症された方の症状を挙げると以下のようなものがあります。
すべての症状が出るとは限りませんが、同じようなアレルギー症状が出た場合、シックハウス症候群の可能性も考えられるかもしれません。
次に、主な原因ともいえる化学物質をまとめてみました。
これら以外にも様々な化学物質があります。化学物質名を並べて見ると、改めて体に悪そうな印象を受けます。ですが、実は化学物質だけが原因とも言い切れない部分があります。もしかすると、住宅のリノベーションをせずとも、症状を改善させることができるかもしれません。
新築住宅で症状が出た場合、原因として考えられるのは建材であるとされることが多いですが、住み慣れたはずの住宅でも急に発症してしまうことがあるようです。その場合、原因として考えられるのは生活習慣やダニ・カビなどの住環境の悪化であるとされています。
今まで何ともなかったのに突然アレルギー症状が出ると、一般的には花粉症などを疑ってしまいがちですが、次の項目を確認してみてください。
建材を入れ替えるためにはリフォームやリノベーションを行う必要がありますが、上記のような住環境を見直すことで、症状が改善される場合もあります。
また、自宅だけではなく職場や学校など長時間過ごす場所で同じように発症する場合もあるそうです。原因が特定しづらいシックハウス症候群ですが、まずは目の届く部分から確認してみることが重要です。
シックハウス症候群の症状が出てきた場合、まずはとにかく思い当たる部屋を換気しましょう。そして、化学物質が多いと感じる部屋のカーテンをクリーニングに出すことも、症状をおさえる一つともなるそうです。また、新しい家具等から化学物質が放出されている場合があります。化学物質全てに「ニオイ」があるとも限りませんので、もし新しい大型家具等を購入した際は数時間換気されることをおすすめします。
最近注目されている換気扇は、室内の温度を保ったまま空気の入れ替えが可能な換気システムも販売されているので、すぐに大掛かりなリフォーム等まで踏み切れない場合は、換気システムだけでも先に入れ替え、常に換気できる環境を整えるところから検討されてもいいかもしれません。
もちろんシックハウス症候群を事前に防ぐためには、住宅を新築あるいはリノベーションされる際は、できるだけ化学物質の含まれていない自然素材仕上げを選び、空調換気システムについても注目してみることが一番重要です。
すでに解決されたと感じている方も多いシックハウス症候群ですが、化学物質はゼロになったわけではなく、空気中に放出されたものを常に換気することで外に出すという、あまり根本的解決とは言えないような対策が取られているのが現状です。そして、その対策となっている24時間換気の換気扇は、ほとんどの方が部屋を使用しないときはスイッチを切って生活されています。
もしもご自宅の住み替え・リノベーション等を検討されている方は、シックハウス症候群のことを再認識したうえで、お部屋の内装を「自然素材仕上げ」にしてみたり、より快適な24時間換気システムについて検討してみてください。